IELTSのコンピューター版受験とは?ペーパー版との違いを解説
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IELTS™(以下、IELTS)は、英語圏での留学・就労・移住を希望する方の英語力を測定する英語4技能試験です。IELTSの試験形式には、パソコン上で解答を入力する「コンピューター版」と解答を紙に書く「ペーパー版」の2つがあります。
いずれの試験形式も、設問の内容や構成は同じです。しかし、スピーキング以外のテスト科目におけるルールなどにはやや違いがあります。人によって感じるメリット・デメリットも異なるため、自分にはどちらの試験形式が適切なのかをあらかじめ把握しておくことが大切です。
そこで今回は、IELTSのコンピューター版を中心に、概要やペーパー版との違い、受験のメリット・デメリットを紹介します。IELTSを受験しようと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
1.IELTSのコンピューター版受験とは
IELTSのコンピューター版とは、会場に1人1台設置されたパソコンで解答をタイピング入力するコンピューターベースの試験形式です。正式名称は「Computer-delivered IELTS」で、頭文字を省略した「CDI」または「CD IELTS」が通称となっています。問題文や選択肢なども、すべてパソコン画面に映し出されるのが特徴です。
【IELTSコンピューター版受験の概要】
受験料 | IDPおよびJSAF:27,500円 ブリティッシュ・カウンシル:28,500円 英検協会およびバークレーハウス:25,380円 |
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必要書類 | 受験日に有効なパスポート |
試験地域 | IDP:東京2会場、大阪2会場、京都1会場 JSAF:東京1会場、大阪1会場、京都1会場 ブリティッシュ・カウンシル:東京2会場、大阪1会場、名古屋1会場 英検協会およびバークレーハウス:東京2会場、大阪1会場、名古屋1会場 |
申し込み締切 | IDP、JSAF、ブリティッシュ・カウンシル:試験日の3日前 英検協会およびバークレーハウス:試験日の5日前 |
試験当日の持ち物 |
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試験結果の発表 | 試験日から3~5日以内に申込先団体のWebサイトや登録したSMS・メールなどで通知され、その後、成績証明書が郵送される |
IELTSが日本で実施された当初は、紙ベースとなるペーパー版のみとなっていました。しかし、世界的なデジタル化に伴い海外でコンピューター版IELTSが導入され始め、2019年3月にはブリティッシュ・カウンシルが運営する日本の一部の試験会場で国内初のコンピューター版が誕生しました。
これを皮切りに、多くのIELTS運営団体がコンピューター版を導入し始め、現在ではコンピューター版のIELTS試験を選ぶ方が徐々に増加しています。
2.IELTSのコンピューター版とペーパー版の違い
コンピューター版IELTSとペーパー版IELTSでは、出題される設問は同一です。ただし、「試験の順番」と「スピーキング以外のテスト科目における一部ルール」、さらに「スコアの発表時期」には違いがあります。
これらの違いを把握せずに試験形式を選んでしまうと、「自分が想像していた流れと実際の流れの相違」によって無駄な焦りが発生する可能性もあるため、あらかじめ相違点をおさえておきましょう。
ここからは、IELTSのコンピューター版とペーパー版の違いを分かりやすく説明します。
2-1.試験の順番が違う
IELTSのコンピューター版とペーパー版の最大の違いが、試験の順番です。
IELTSコンピューター版では、4技能のテストが下記の順番で実施されます。
【IELTSコンピューター版の試験の順番】
(1) | リスニングテスト |
---|---|
(2) | リーディングテスト |
(3) | ライティングテスト |
(4) | スピーキングテスト |
※スピーキングテストを先に受けてからその他の科目を受験することもできます。
対して、IELTSペーパー版の試験の順番は下記の通りとなっています。
【IELTSペーパー版の試験の順番】
(1) | ライティングテスト |
---|---|
(2) | リーディングテスト |
(3) | リスニングテスト |
(4) | スピーキングテスト |
IELTSペーパー版は、かつて上記に記載しているIELTSコンピューター版と同一の実施順序となっていました。しかし、2019年4月13日の試験からは、リスニングテストとライティングテストの順番が入れ替わる形で変更されていることに注意しておきましょう。
2-2.リスニングテストの違い
IELTSのコンピューター版とペーパー版では、リスニングテストにおける一部ルールにも違いがあります。
コンピューター版 | ペーパー版 |
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※ペーパー版は問題用紙に書き込む生徒が多いため、転写時間が取られている
特に大きな違いが、コンピューター版では「2分間の解答確認時間」、ペーパー版は「10分間の解答転写時間」が与えられるという点です。
基本的に、リスニングテストは音声を聴きながら解答します。ペーパー版の場合は解答用紙に直接書かず、まず問題用紙に仮の解答をメモとともに書き込んでから最後に解答用紙に転記する受験者が多いため、長めの転写時間が与えられています。
一方で、コンピューター版は解答を直接入力するため、与えられた2分間は見直し時間として使用するのが基本です。
2-3.リーディングテストの違い
リーディングテストにおいては、IELTSコンピューター版とIELTSペーパー版でさまざまな点に違いがあります。
コンピューター版 | ペーパー版 |
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ペーパー版は、試験官が残り時間を定期的に口頭で知らせてくれるほか、問題用紙に直接メモを残したり印をつけたりすることが可能です。
一方で、コンピューター版は画面上に残り時間が表示されるため、試験官から口頭で残り時間を伝えられることはありません。問題用紙に直接メモを書き込むのも不可能ですが、カラーマーカーツールを活用すればパッセージに印をつけられます。
加えて、コンピューター版では左側にパッセージ、右側に設問が表示されます。本文と設問を同じ画面で瞬時に見られるため、ペーパー版のように本文の記載部分と設問の記載部分を行ったり来たりする必要はありません。
パソコン上の操作によってコピー&ペーストもできるため、「文章・単語の順番を入れ替える」という作業においてはペーパー版よりもスムーズに進められるでしょう。
2-4.ライティングテストの違い
IELTSのコンピューター版とペーパー版のライティングテストには、「コンピューター版のほうがやや有利」と思えるような違いが存在します。
コンピューター版 | ペーパー版 |
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IELTSのライティングテストにおけるコンピューター版とペーパー版の大きな違いが、「文字数のカウント方法」です。コンピューター版ではシステムによって文字数が自動でカウントされることに対して、ペーパー版は受験者本人が手動でカウントしなければなりません。
また、コンピューター版はコピー&ペーストの操作が可能なため、文章の削除や追記はペーパー版と比べて容易です。対して、ペーパー版は文章途中での追記がやや困難となる点に注意が必要です。
2-5.スコアの発表時期の違い
IELTSのコンピューター版とペーパー版とでは、スコアの発表時期にも違いがあります。それぞれの発表時期は、下記の通りです。
試験形式 | 結果の発表時期 |
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コンピューター版 | 試験日から3~5日後 |
ペーパー版 | 試験日から13日後 |
ただし、成績表の郵送を依頼する場合の必要日数はコンピューター受験とペーパー受験とで大きな差はありません。コンピューター版のほうが早いのは、あくまでも試験結果の発表時期のみとなることを覚えておきましょう。
3.IELTSをコンピューター版で受験するメリット
IELTSコンピューター版受験には、IELTSペーパー版では得られないさまざまなメリットがあります。
ここからは、コンピューター版でIELTSを受験するメリット4つをそれぞれ詳しく解説します。コンピューター版とペーパー版のどちらで受験しようか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
3-1.リスニングテストで集中しやすい
IELTSコンピューター版のリスニングテストでは、一人ひとりに専用ヘッドホンが配布されます。周囲の雑音やタイピング音が耳に入りにくくなるほか、座席に関係なくクリアな音声を聴けるため、テストに集中しやすくなる点が大きなメリットと言えるでしょう。
また、IDP公式テストセンターではノイズキャンセリング機能つきのヘッドホンが導入されています。リーディングテスト後のライティングテストでもそのまま装着可能なため、集中力をより高めるための耳栓代わりとしても使用できます。
なお、近年ではIELTSペーパー版でも一部のIDP会場のみリスニングテストでヘッドホンを使用できます。ペーパー版でもヘッドホンを使用したい方は、事前にヘッドホン使用会場を調べておきましょう。
3-2.入力した文字の修正がしやすい
IELTSコンピューター版では、解答欄への入力がすべてキーボード作業となります。
IELTSペーパー版で書き直しや追記が必要な場合は、消しゴムをかける必要があります。こうした修正に時間を要してしまい、残り時間が危うくなるケースも決して珍しくありません。
しかし、コンピューター試験であればバックスペースキーですばやく削除でき、文中の追記・修正も容易です。コピー&ペーストもできるため、単語や構成の並べ替え・難しい単語の入力もスムーズに行えるでしょう。
3-3.字が読めないことが理由で減点されない
「試験官が読めない文字を書くと減点対象となる」というのは、IELTSペーパー版にはあってIELTSコンピューター版にはない注意点となります。
ペーパー版は、鉛筆を使って解答用紙に自分で字を書くスタイルです。字が汚く読みづらければ、試験官は正常な判断ができず、綴り間違いとみなされ減点される可能性も大いにあります。
しかし、コンピューター版はキーボードで文字を入力するため、誰でも読める字を書けるかどうかは関係ありません。書かれた字を試験官が読めなかったことによって減点されることがない点は、コンピューター版ならではのメリットと言えるでしょう。
3-4.試験回数が多い
IELTSコンピューター版は、ペーパー版より年間の試験回数が多く、希望の日程で受験しやすくなっています。試験回数の多さから会場が空いている傾向にあり、全員が着席するまでの待ち時間も少ない点も1つのメリットと言えるでしょう。
また、IELTSの受験予約は基本的に会場が定員に達した時点で、予約締切日に関係なく申請自体が締め切られます。会場が空いている傾向にあるIELTSコンピューター版の場合、「この日に受験申込をしたかったのに、予約前に定員に達したため別日にせざるを得なくなった」という状況が生じにくいでしょう。
4.IELTSをコンピューター版で受験するデメリット
IELTSコンピューター版には、ペーパー版にはないさまざまなメリットがある一方で、コンピューター版特有のデメリットもいくつか存在します。
ここからは、IELTSコンピューター版を受験するデメリットを3つ紹介します。コンピューター版のメリット・デメリットを比較しつつ、ペーパー版とどちらが向いているかを考えた上で自分に合った試験形式を選びましょう。
4-1.リスニングテストの確認時間が短い
IELTSペーパー版のリスニングテストは、10分間の解答転写時間が設けられており、転写しながら見直しができます。
一方で、IELTSコンピューター版はリスニングテストの解答確認に使える時間が2分間と、ペーパー版リスニングテストよりも極めて短い時間設定となっています。
焦りを感じながらの解答確認では、ミスを正しく拾うことが困難です。限られた解答確認時間で落ち着いて見直しできるようになるためにも、「各パートが終わって次にパートの移る際に解答を確認しておき、最後の2分は全体の入力漏れがないかを確認する」やり方に慣れておきましょう。
4-2.タイピングが遅いと不利になる
IELTSコンピューター版では、すべての解答をキーボード操作で入力する必要があります。そのため、タイピングが遅い・不慣れな方にとっては不利です。
また、「日常的にパソコンを使用しており、ある程度のタイピング力が備わっている」という方でも、英文タイピングに慣れていない場合は注意が必要です。「スムーズに英文のタイピングができるか」を確認し、必要に応じて英文のタイピング練習をしておきましょう。
4-3.会場の数が少ない
IELTSコンピューター版に対応しているテスト会場は、ペーパー版の会場と比べて少ないことに注意が必要です。首都圏の会場数に大きい違いはありませんが、地方で受験する場合には事前にコンピューター版会場を確認しておきましょう。
例えば、英検が主催するIELTSテストの場合、2024年2月時点でペーパー版のテスト会場は札幌・東京・大阪・熊本を含む16会場なのに対し、コンピューター版は東京(2会場)・名古屋・大阪の4会場しか存在しません。
受験のために多くの時間と交通費をかけて遠方まで足を運ばなければならない点は、受験地から遠い場所に住んでいる方にとってデメリットとなるでしょう。
5.IELTSはコンピューター版・ペーパー版のどちらを選ぶべき?
IELTSのコンピューター版とペーパー版には、それぞれ一長一短あります。コンピューター版だけでなくペーパー版のメリット・デメリットも把握し、自分はどちらの試験形式に適性があるかをよく検討するとよいでしょう。
下記は、コンピューター版に向いている人とペーパー版に向いている人の特徴をまとめた表です。
コンピューター版が向いている人 | ペーパー版が向いている人 |
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コンピューター版は、ある程度の英文タイピング力がある方やパソコン操作に抵抗がない方にとって有利な試験形式と言えます。また、文字を丁寧かつきれいに書くのが苦手な方、なるべく早い段階で結果が知りたい方にも向いているでしょう。
一方で、タイピングやパソコン操作が得意ではない方はペーパー版がおすすめです。紙ベースでのIELTS学習をしてきた方も、慣れているペーパー版のほうが集中しやすくなるでしょう。
6.IELTSのコンピューター版を受験するときは模試が活用できる
IELTSのコンピューター版を受けるときは、IELTSの運営団体かつ共同オーナーであるIDPの公式サイトから、コンピューター版のテスト本番に近い形式のサンプルテストにチャレンジしておくのもおすすめです。このサンプルテストは無料で受けられるため、試験の流れや操作方法にある程度慣れるまで繰り返し利用するとよいでしょう。
また、問題集に記載された模試を解いておくのもおすすめします。中でも『ケンブリッジのIELTS公式ガイド』はIELTSテストの設問作成団体であるケンブリッジ大学英語検定機構が制作した教材であり、初の総合ガイドとして多くのIELTS受験者に選ばれています。8回分のアカデミック模擬テストと2回分のジェネラル・トレーニングテストが収録しているほか、実際のスピーキングテストの様子と採点方法を解説したDVD-ROMも付属している点が魅力です。
まとめ
IELTSコンピューター版は、会場に設置されたパソコンで解答を入力する試験形式です。「CDI」または「CD IELTS」とも呼ばれています。テスト内容はペーパー版と同一ですが、試験の順番・スピーキング以外のテスト科目における一部ルール・試験結果の発表時期には違いがあることを覚えておきましょう。
自分に合った試験形式を選ぶためには、コンピューター版とペーパー版それぞれのメリット・デメリットを比較しつつ、どちらに適性があるかをよく検討することが大切です。
いずれの試験形式を選ぶにしても、「オンライン上のサンプル問題・公式模擬試験の活用」や「IELTSに特化したオンライン英会話レッスンの受講」はスコアアップの鍵となります。ここまでの内容を参考に、自分に合った試験形式の選択・サンプル問題や模試を活用したIELTS対策をぜひ進めてください。