IELTSとTOEICの違いは何?どちらを受験すべきか解説
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日本国内において、英語スキルを測るための代表的な試験には「TOEIC®(以下、TOEIC)」が挙げられますが、国際的に認められている英語資格にはその他にもさまざまな種類があります。
近年ではイギリス発祥の「IELTS™(以下、IELTS)」も注目を集めていますが、国内ではメジャーな英語資格ではないことから、「IELTSとTOEICの違いが知りたい」「IELTSとTOEIC、どちらを受験すべきか知りたい」と考える方も多くいるでしょう。
そこで今回は、IELTSとTOEICの違いと難易度の目安を詳しく説明します。英語学習者や英語圏の大学・大学院への留学、さらに就職や移住を考えている方はぜひ参考にしてください。
1.IELTSとTOEICの違い
IELTSとは、全世界において11,000以上の機関で認定されているイギリス発祥の英語試験です。「International English Language Testing System」の頭文字をとった略称で、IDP Educationとケンブリッジ大学英語検定機構、ブリティッシュ・カウンシルの3団体が共同で開発・運営しています。
一方のTOEICは、世界160か国で実施されている、日本で発案・アメリカで制作された英語試験です。「Test Of English for International Communication」の頭文字をとった略称で、日本では一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会によって実施・運営されています。
IELTSとTOEICはいずれも「合格・不合格」という形で試験結果が示されるのではなく、獲得したスコアによって英語4技能(リスニング・リーディング・ライティング・スピーキング)の能力が測定されることが特徴です。
しかし、目的や出題内容、さらに試験形式などには細かな違いがあります。どちらの英語試験が自分に向いているかを判断するためにも、あらかじめ違いをおさえておきましょう。
1-1.IELTSとTOEICの目的の違い
IELTSとTOEICの最も大きな違いは、「試験を受ける目的」にあります。
IELTSは、主に英語圏の国々にある大学・大学院への進学・留学や就職・移住に向けて、4技能の英語力を測定する試験です。かつてはイギリスでの進学や就職においてメジャーな英語試験でしたが、近年ではオーストラリアやカナダ、アメリカでも主流となっています。
一方のTOEICは、主にオフィスや日常生活における実用的な英語能力を幅広く測定する試験です。国内ではTOEICの認知度のほうが高いことも相まって、グローバル企業や外資系企業では応募条件としてTOEICのスコアが求められることも多々あります。
1-2.IELTSとTOEICの出題内容の違い
IELTSとTOEICでは、出題内容にも大きな違いがあります。
IELTSは「アカデミック・モジュール(以下、アカデミック)」と「ジェネラル・トレーニング・モジュール(以下、ジェネラル・トレーニング)」の2つのテストモジュールに分けられています。
IELTSアカデミック | 英語圏への進学・留学を希望する方向けのテストモジュール |
---|---|
IELTSジェネラル・トレーニング | 英語圏への就職・移住を希望する方向けのテストモジュール |
アカデミックとジェネラル・トレーニングの出題内容は、下記の通りです。
【IELTSの出題内容】
科目 | IELTSアカデミック | IELTSジェネラル・トレーニング |
---|---|---|
リスニング |
の4パートが出題される |
|
リーディング | 書籍・雑誌・新聞より抜粋した文章を使用、3つのパッセージが出題される 専門知識までは不要であるが、幅広い学術的内容が含まれる |
の3つのパッセージが出題される |
ジェネラル・アカデミックともに
などの形式で出題される |
||
ライティング | アカデミックでセミフォーマル、中立的な文体で執筆を求められる 英単語や文法の知識だけでなく、論理的な文章を書き、適切にデータを選択・比較するスキルも必要になる タスク1. 提示されたグラフや図表から情報を要約して説明する タスク2. 意見・問題と解決策、長所・短所などについてのエッセイを書く 大学・大学院への進学希望者向けのライティングスキルが問われる 上記2つのタスクが出題される |
日常生活の場面がテーマになる タスク1. 与えられた状況に合わせて、情報を要求したり状況を説明したりする手紙やメールを書く タスク2. 意見・問題と解決策などについてのエッセイを書く(アカデミックと比べ、文体がフォーマルでなくても問題ない) 上記2つのタスクが出題される |
スピーキング |
の3つのセクションが出題される |
出典:IELTS「出題形式」
アカデミックとジェネラル・トレーニングは、いずれも4技能の英語力を測る点が共通しているものの、テスト科目によって出題内容が異なることも特徴です。
一方でTOEICは、「TOEIC」と「TOEIC Bridge」の2つのテストプログラムに分けられています。IELTSとは違い、プログラム内の区分によって測定できる英語技能が異なることが特徴です。
TOEIC |
日常生活からビジネスシーンまでの幅広い英語力を測定する試験 【TOEICの3つの区分】
|
---|---|
TOEIC Bridge |
主に日常生活を題材とした、基礎的な英語力を測定する英語学習初級者~中級者向けの試験 【TOEIC Bridgeの2つの区分】
|
TOEICとTOEIC Bridgeの出題内容は、下記の通りです。
【TOEICの出題内容】
TOEIC L&R | TOEIC Listening Test |
会話やナレーションを聞いて設問に解答する
の4パートが出題される |
---|---|---|
TOEIC Reading Test |
印刷された問題を読んで設問に解答する
の3パートが出題される |
|
TOEIC S&W | TOEIC Speaking Test |
の5パッセージが出題される |
TOEIC Writing Test |
の3タスクが出題される |
|
TOEIC Speaking Test | TOEIC Speaking Test | TOEIC Speaking & Writing Testsと同一内容が出題される |
TOEIC Bridge L&R | TOEIC Bridge Listening Tests |
の4パートが出題される |
TOEIC Bridge Reading Tests |
の3パートが出題される |
|
TOEIC Bridge S&W | TOEIC Bridge Speaking Tests |
の5パッセージが出題される |
TOEIC Bridge Writing Tests |
の5タスクが出題される |
出典:日本国際ビジネスコミュニケーション協会「TOEIC Bridge® Listening & Reading Tests テストの形式と構成」
出典:日本国際ビジネスコミュニケーション協会「TOEIC® Speaking & Writing Tests テストの形式と構成」
出典:日本国際ビジネスコミュニケーション協会「TOEIC® Speaking & Writing Tests テストの形式と構成」
出典:日本国際ビジネスコミュニケーション協会「TOEIC Bridge® Listening & Reading Tests」
出典:日本国際ビジネスコミュニケーション協会「TOEIC Bridge® Speaking & Writing Tests」
このように、IELTSはテストモジュールが違っても4技能の英語力を測定できる一方で、TOEICは選択する試験の種類によって測定できる科目が異なります。一度の試験で出題される科目数で判断すると、IELTSのほうが汎用的な英語力の保有を証明しやすいと言えるでしょう。
1-3.IELTSとTOEICの試験形式の違い
IELTSの主な受験形式は、パソコン上で解答する「コンピューター版」と、紙・鉛筆を用いて解答する「ペーパー版」の2つがあります。また、アカデミックの場合は、自宅などからオンラインで受験できる「IELTS Online」も選択可能です。
一方で、TOEICの受験形式は科目によって異なり、TOEIC L&Rはペーパーのマークシート形式、TOEIC S&Wはパソコンでの受験となります。
なお、個人単位で受験申し込みのできるTOEICの公開テストは、オンライン受験ができません。自宅などからのオンライン受験が可能となるのは、塾や大学、会社などの団体単位で申し込みができるIPテストのみとなることに注意しておきましょう。
1-4.IELTSとTOEICの試験時間の違い
前述の通り、IELTSは一度の試験で4技能すべての英語力を測定できますが、TOEICの場合、一度の試験で測定できる科目は最大で2つとなっています。そのため、IELTSとTOEICとでは試験時間にも違いが生じます。
【IELTS・TOEICの試験時間の違い】
IELTS |
●ペーパー版:約3時間
コンピューター版:約2時間45分
|
---|---|
TOEIC L&R | 約2時間 Listening:約45分 Reading:約75分 |
TOEIC S&W | 約1時間20分 Speaking:約20分 Writing:約60分 |
TOEIC Bridge L&R | 約1時間 Listening:約25分 Reading:約35分 |
TOEIC Bridge S&W | 約1時間 Speaking:約15分 Writing:約37分 |
IELTSはペーパー版で約3時間、コンピューター版で約2時間45分となる一方、TOEIC L&Rは最大でも2時間(120分)と、短くなっています。
なお、アカデミックでのみ受験できるIELTS Onlineの場合、1日目はスピーキングテスト、2日目はリスニングテスト・リーディングテスト・ライティングテストと2日間にわたって実施されることも特徴です。2日連続で受験する必要があるため、オンライン受験を希望する場合はスケジュールを確保しておきましょう。
一方で、TOEICのオンライン版であるIPテストでは、受験者の能力によって設問が変化する「CAT(Computer Adaptive Test)」という仕組みが採用されており、少ない設問数でも受験者の能力を正確に判定できるようになっています。そのため、IPテストの試験時間は1時間と、通常のマークシート形式での試験よりも1時間短縮されることが特徴です。
1-5.IELTSとTOEICの受験料・開催会場の違い
IELTSとTOEICの2024年4月時点における受験料と開催会場は、下記の通りです。
IELTS | TOEIC | ||
---|---|---|---|
受験料(税込) ※2024年4月時点 |
IDPおよびJSAF:27,500円 ブリティッシュ・カウンシル:ペーパー版25,380円、コンピューター版29,900円 英検協会およびバークレーハウス:25,380円 |
|
|
試験地域 | ペーパー版の試験地域 | IDP:札幌、仙台、東京、名古屋、静岡/浜松、京都、大阪、岡山、香川/高松、福岡、那覇 JSAF:東京・横浜・埼玉・山梨・名古屋・大阪・京都・神戸・岡山・広島 ブリティッシュ・カウンシル:東京、大阪、名古屋 英検協会:札幌、秋田、仙台、千葉/船橋、東京、横浜/川崎、長野/松本、金沢、静岡/浜松、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡、熊本 バークレーハウス:東京、名古屋 |
日本全国(IPテストのオンライン試験の場合は自宅から受験可能) |
コンピューター版の試験地域 | IDP:東京2会場、大阪2会場、京都1会場 JSAF:東京1会場、大阪1会場、京都1会場 ブリティッシュ・カウンシル:東京2会場、大阪1会場、名古屋1会場 英検協会およびバークレーハウス:東京2会場、大阪1会場、名古屋1会場 |
IELTSの受験料は、試験実施団体と受験形式によって異なる点に注意が必要です。ブリティッシュ・カウンシルが実施する試験の場合は、ペーパー版とコンピューター版とで受験料が異なることも覚えておきましょう。
また、IELTSペーパー版の試験会場は東京や大阪、名古屋といった都市圏のほか、地方にも設置されているのに対し、コンピューター版は東京・大阪・名古屋・京都に受験地域が限られています。
一方でTOEICの受験料は、4,950円〜10,450円とIELTSの受験料よりも安いことが特徴です。またペーパー版・コンピューター版ともに試験地域はIELTSよりも多く、受験のために多くの時間と交通費をかけて遠方まで足を運ぶ必要がありません。
2.IELTSとTOEICの難易度の目安
IELTSとTOEICのどちらを受験しようか迷っている方は、それぞれの難易度を比較することも大切です。各スコアの難易度を比較する際は、英語をはじめとした外国語の習熟度と運用能力を同一基準で評価する国際指標の「CEFR(セファール)」をベースに考えるとよいでしょう。
【CEFRが提示する6段階の共通参照レベル】
熟練した言語使用者 | C2 | 聞いたり読んだりした、ほぼ全てのものを容易に理解することができる。いろいろな話し言葉や書き言葉から得た情報をまとめ、根拠も論点も一貫した方法で再構築できる。自然に、流暢かつ正確に自己表現ができる。 |
---|---|---|
C1 | いろいろな種類の高度な内容のかなり長い文章を理解して、含意を把握できる。言葉を探しているという印象を与えずに、流暢に、また自然に自己表現ができる。社会生活を営むため、また学問上や職業上の目的で、言葉を柔軟かつ効果的に用いることができる。複雑な話題について明確で、しっかりとした構成の、詳細な文章を作ることができる。 | |
自立した言語使用者 | B2 | 自分の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的な話題でも具体的な話題でも、複雑な文章の主要な内容を理解できる。母語話者とはお互いに緊張しないで普通にやり取りができるくらい流暢かつ自然である。幅広い話題について、明確で詳細な文章を作ることができる。 |
B1 | 仕事、学校、娯楽などで普段出会うような身近な話題について、標準的な話し方であれば、主要な点を理解できる。その言葉が話されている地域にいるときに起こりそうな、たいていの事態に対処することができる。身近な話題や個人的に関心のある話題について、筋の通った簡単な文章を作ることができる。 | |
基礎段階の言語使用者 | A2 | ごく基本的な個人情報や家族情報、買い物、地元の地理、仕事など、直接的関係がある領域に関しては、文やよく使われる表現が理解できる。簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄について、単純で直接的な情報交換に応じることができる。 |
A1 | 具体的な欲求を満足させるための、よく使われる日常的表現と基本的な言い回しは理解し、用いることができる。自分や他人を紹介することができ、住んでいるところや、誰と知り合いであるか、持ち物などの個人的情報について、質問をしたり、答えたりすることができる。もし、相手がゆっくり、はっきりと話して、助けが得られるならば、簡単なやり取りをすることができる。 |
引用:文部科学省「各資格・検定試験とCEFRとの対照表」/引用日2024/4/6
下記は、IELTS・TOEICそれぞれのスコアが、CEFRにおいてどのレベルに相当するかを示した換算表です。
【IELTSとTOEICのスコア換算】
CEFR | IELTS | TOEIC L&R/ TOEIC S&W |
---|---|---|
C2 | 9.0-8.5 | - |
C1 | 8.0-7.0 | 1990-1845 |
B2 | 6.5-5.5 | 1840-1560 |
B1 | 5.0-4.0 | 1555-1150 |
A2 | - | 1145-625 |
A1 | - | 620-320 |
一般的に、受験や留学などで求められるIELTSバンドスコア5.5-6.5は、CEFRの「B2」にあたります。B2は、ある程度難しい内容でも理解でき、流暢かつ自然にコミュニケーションがとれるレベルを指します。
そして、TOEIC L&R/TOEIC S&Wの2つのテストを受ける場合、CEFRのB2レベル・IELTSスコア5.5-6.5に相当する合計スコアは1840-1560点です。TOEIC L&Rは990点満点、TOEIC S&Wは400点満点です。TOEIC S&Wのスコアを2.5倍にしてL&Rスコアと合算することで合計スコアは計算できるため、TOEIC L&Rで790点程度、TOEIC S&Wで320点程度のスコア獲得が必要になります。
しかし、IELTSのスコア5.5-6.5は公式からも「中程度のユーザー」や「有能なユーザー」として定義づけられており、TOEICと比較して難易度が高いと言えるでしょう。
2-1.IELTSとTOEICのどちらを受験すべき?
IELTSは英語圏への留学・就職や移住といった幅広いシーンを対象とする英語資格であり、利便性の高さが特徴です。対してTOEICは、基本的に日本にある大学への出願時・グローバル企業や外資系企業への応募時など、国内で活用されることが多くなっています。
そのため、英語圏の大学・大学院への受験や英語圏で主に展開している企業での就職を目指している場合はIELTSを、国内企業での就職を目指しているならTOEICを受験するとよいでしょう。
また、基礎的な語学力が身についていないという英語初心者の方は、まずTOEICのスコア獲得を目指して基礎を学び、ある程度の英語スキルを習得した上でIELTSを受験するのもおすすめです。
まとめ
IELTSはイギリス発祥の英語試験で、世界11,000以上の機関で認定されています。一方のTOEICは世界160か国で実施されている、日本発案・アメリカ制作の英語試験です。
IELTSは、英語圏の大学・大学院への受験や英語圏で主に展開している企業での就職を目指している方に向いています。そしてTOEICは、国内企業での就職を目指している方のほか、「英語の基礎を学びたい」という初級者の方にもおすすめと言えるでしょう。
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